
サワディーカー!パットです。
今回ご紹介するこの博物館は、「医学の世界」をまったく新しい形で体験できると話題のミュージアムです。
ここは、これまでの“静かでちょっと難しい博物館”のイメージとはまったく違っていて、見て・感じて・楽しめる体験型の展示が魅力です。思わず「博物館ってこんなに面白いんだ!」と思えるような場所になっています。
建物は、1903年に建てられた昔のトンブリー駅舎をリノベーションして2013年頃に博物館として再生された建物で、シリラート病院の敷地内にあります。
展示内容もとても充実していて、バンコク・ノイ地区やワンラン運河周辺の歴史、トンブリー時代からの街の歩み、シリラート病院の歴史、タイ伝統医学の発展、南部鉄道の建設、そしてこの地域で暮らしてきた人々の生活などが紹介されています。
どれも、ただの説明ではなく、最新の映像や演出を使ってわかりやすく楽しく見られるようになっているので、観光で訪れても十分楽しめるスポットです。
※本記事で紹介しているのは「シリラート・ビムックスタン博物館」です。
同じシリラート病院内には、いわゆる「死体博物館(Siriraj Medical Museum)」もありますが、別施設となります。

敷地内には、蒸気機関車が展示されています。
この場所はかつて「トンブリー駅(バンコク・ノイ駅)」として使われており、タイで最初の南部鉄道の始まりの駅でした。ラーマ5世の時代に開通し、当初はトンブリー駅からペッチャブリー駅までを結ぶ路線としてスタートしました。
その後、第二次世界大戦中に駅舎は破壊されましたが、戦後に再建され、1950年に新しい駅舎として開業しました。しかし、2003年には正式に使用停止となり、現在の形へと役目を終えています。

博物館として再生された元駅舎の内部に入ると、中央ホールはまるで「これから列車に乗る前」のような雰囲気が広がっています。
かつての切符売り場の形がそのまま残されており、実際に使われていた駅の空気感を感じられる空間です。現在は博物館の入場チケット売り場として活用されていて、当時の駅の面影がしっかりと生きていて、まるでタイムスリップしたような体験ができます。


見学はメインビルから始まります。最初に入るのが「歴史展示室」です。
この部屋は図書館のような落ち着いた雰囲気でまとめられており、まず映像でこの場所や博物館の歴史を学ぶことができます。室内には、病院建設前に土地を整備する際の発掘で見つかった貴重な資料も展示されています。また、部屋に配置されている机や椅子は、実は昔の医学部生が講義や勉強に使っていたものを再現・活用したものです。
全体としては、博物館のストーリーを紹介する「導入の講義室」のような空間になっていて、映像と展示を通して、静かな図書館のような雰囲気の中で歴史を学べるように設計されています。

この部屋は、訪れる人々がタイ国王や王族の方々のご恩とご慈愛を思い出すために設けられた空間です。
シリラート病院やタイの医学の発展に長く深い関わりを持ってきた、歴代の国王や王族の功績や支援について紹介されており、その歩みを静かに振り返ることができます。



この施設は、かつてイギリスなどの大手アヘン商人から輸入された原料アヘンを加工・精製する役割を担っていました。
アヘンは煮沸などの工程を経て使用できる状態にされ、その後カートリッジ状に詰められ、バンコクの小規模な商人や各都市で販売する役人などへ流通していました。
タイにおけるアヘンの取引は1959年7月1日まで続き、その後政府によって法律が改正され、アヘンの使用および販売は厳しく禁止されました。現在ではアヘンは麻薬として分類されています。




この部屋では、チャオプラヤー川流域で起こった重要な歴史的出来事をテーマにした映像作品を見ることができます。
ストーリーは、チャオプラヤー川住んでいる小さなエイ(淡水エイ)が案内役となり、観る人を過去の時代へと連れていくように進んでいきます。
まるでタイムトラベルをしているように、チャオプラヤー川の歴史やその周辺で起こった出来事を、楽しくわかりやすく体験できる展示空間です。


この部屋では、医学教育の歴史が紹介されています。
過去から現在に至るまでの医学の発展の歩みを、貴重な医療関連の展示資料を通してわかりやすく見ることができます。


ここでは、初期のシリラート医学校で実際に使用されていた人体解剖模型が展示されています。
医学教育が始まった当時の学びの様子を知ることができ、医学生たちがどのように人体の構造を学んでいたのかを、貴重な資料を通して見ることができます。







展示エリアでは、医学の発展を支えてきた道具や教材が紹介されています。
薬研(やげん)では薬草をすりつぶして薬を作っていた昔の製法を知ることができ、医師の教科書からは当時の医学教育の様子がうかがえます。
また、35mmスライドプロジェクターやランタンスライドなどの映像機器も展示されており、図や写真を使って教えていた時代から、より視覚的な教育へと進化してきた流れが分かります。
テレビ画面付きスライド機器などもあり、教育方法の発展を感じられる内容です。
性教育の展示では、身体や健康について正しく学ぶための医学教育の一部として紹介されています。


初期の医学教育において解剖学を学ぶために使われていた、最初期の教材の一つです。
この模型は、約100年前のパルプ素材で作られており、当時の医学教育の貴重な実物として残されています。医学の発展を物語る証拠として、非常に重要な展示です。



顕微鏡や検査室、炭酸ガスレーザー装置など、診断や治療に使われてきた医療機器が展示されています。
顕微鏡では細胞や微生物の観察、検査室では診察や検査の流れ、レーザー装置では精密な手術や治療の技術を見ることができます。


この部屋では、古代から受け継がれてきた「サイアム(タイ)の医学知識」が紹介されています。
祖先たちが積み重ねてきた医学の知恵や、古代人の身体に関する理解、そして健康のために実践されてきた仏教的な教えに基づく生活の知恵(ダンマ)などが取り上げられています。
こうした知識は世代を超えて受け継がれ、現在まで大切な医学的遺産として残されています。




血圧計や心電図装置などの医療機器、タイ医学の写本、そして薬研(やげん)などの薬作りの道具が展示されています。
測定機器による診断技術と、伝統医学の知識の両方から、タイの医療の発展を知ることができます。

ここでは、数百種類におよぶタイハーブが集められた、昔の薬局のような空間が再現されています。
古代から伝わるタイの薬草やその効能が紹介されており、さまざまな道具や器具とともに、当時の薬作りの様子を見ることができます。
伝統的な知識をもとにしながら、当時の技術で医薬品が作られていた過程を知ることができる展示です。








薬草を保管する土器、分量を量るはかり、すりつぶすための乳鉢やすり石など、薬作りの一連の工程が分かります。薬草を分類して保存する薬棚もあり、当時の薬局の様子を知ることができます。


産後ケア「ユーファイ(産後の体を温めて回復させるタイの伝統療法)」
出産後の女性の体をケアし、回復を促すタイの伝統的な療法です。
血行を促進し、体内に残った水分の排出を助けることで、子宮の回復を早めるとされています。また、お腹を引き締めたり、体の冷えやむくみを防いだり、産後の炎症をやわらげる目的でも行われてきました。





患者の命を預かる手術チームの一員として、実際の手術の流れを体験できるシミュレーション空間です。
レトロな手術室を再現した環境の中で、医療現場における緊張感やチームワークの重要性をリアルに感じることができます。

この博物館見学の最後の見どころとなるのが「ニワシリナウェート」です。バンコク・ノイ運河沿いの倉庫建築を利用した展示空間で、かつての運河沿いの暮らしの雰囲気を再現しています。
当時、この地域にはバンコク中心部の人々だけでなく、周辺コミュニティや役人なども移り住み、多様な文化・芸術・知恵・生活様式が混ざり合いながら、バンコク・ノイ独自の暮らしが形成されていきました。
また、考古学調査で発見された重要な遺物として、大型の古代船も展示されています。これはタイの貴重な文化遺産の一つであり、シリラート病院の医学部が関係機関と協力し、保存・修復と詳細な研究を進めているものです。

昔のバンコク・ノイ運河の両岸に広がっていた、当時の人々の暮らしの雰囲気を再現しています。

タイの伝統的な人形劇の展示です。人形を使って物語を表現する、昔ながらのタイの芸能文化を紹介しています。

タイで広く尊敬される高僧で、仏教の教えや文化を広めた重要な人物です。



タイにおけるムスリム文化の食事を紹介しています。

ラタナコーシン時代から続く有名な市場で、さまざまな商品が売られていました。
日用品や容器、薬、衣類、食べ物などが並び、水上と陸上の両方でにぎわう、当時の暮らしを支えた市場文化を紹介しています。

バンコク・ノイのコミュニティは、多くの国籍の人々が共に暮らす地域でした。その中で中国系の人々は、商人として地域の生活を支える重要な存在でした。
そのため昔は、中華系の商店が多く見られ、食料品や乾物、衣類、日用品など、暮らしに必要なさまざまなものが販売されていました。

昔、バンコク・ノイ地域では、役人や地位のある人々が川沿いの土地を選んで住むことが一般的でした。
家は2階建てで建てられることが多く、水辺の暮らしに適した住まいとして発展していました。


昔の地域コミュニティには、集会やさまざまな活動を行うための「ダンマホール(仏教堂)」や集会所のような建物がありました。
人々が集まり、交流したり共同作業を行ったりする、地域の中心的な場所として使われていました。

バンコク・ノイのタイ・ムスリムの人々は、もともとバンコク・ノイ運河の南岸沿いに暮らしていました。水辺に家を建てたり、船上で生活するなど、水と共にある暮らしをしていた地域です。
このコミュニティは、敷布団やマットレスを縫製する技術を持っていることでも知られていました。

この古代船は、かつて鉄道の線路の下から発見されたもので、現在の地表から約5〜7メートルの深さに埋まっていました。全長約24メートル、幅約5メートルの大型木造船です。
船体は釘や金属製の留め具で組み立てられ、全体に真鍮板が貼られていました。これはアユタヤ後期からラタナコーシン初期にかけての船と考えられ、200年以上前のものと推定されています。
この船は、バンコク・ノイ運河沿いの旧トンブリー駅建設中に発見され、タイの水上交通の歴史を示す重要な証拠とされています。
また、船底にはイギリス・バーミンガムの企業製の真鍮板(マンズメタル社製)が使われており、貝類の付着を防ぐための工夫がされていたことから、当時すでに海外との交易が行われていたことも分かります。

この船は非常に貴重な歴史的遺産であり、博物館では修復された実物の船として保存・展示されています。
かつての水上生活や交易の様子を伝える重要な資料として、当時の人々の暮らしや国際的な貿易の歴史を学ぶことができます。
医学の歴史、運河沿いの暮らし、そして人々の知恵や文化までが一つにつながった、とても見応えのある博物館でした。
旧トンブリー駅という歴史ある建物の中で、過去と現在が自然に重なり合いながら、バンコク・ノイの物語が静かに息づいています。
ただの「見る展示」ではなく、その場に立つことで時代の空気まで感じられるような特別な空間。歩き終わる頃には、この地域がぐっと身近に感じられるはずです。
バンコクを訪れるなら、ぜひ一度足を運んでみてほしい、心に残るミュージアムです。
Location : Number 2 Wang Lang Road, Siriraj Subdistrict, Bangkok Noi District, Bangkok
(シリラート病院の敷地内に位置しています)
Phone : 0 2419 2601, 0 2419 2618-9
開館時間:月曜・水曜〜日曜(火曜および祝日は休館)10:00〜16:30
入館料:大人80バーツ、18歳未満の子ども25バーツ、外国人200バーツ、身長120cm未満の子どもは無料
この博物館はシリラート病院の敷地内にあり、単なる歴史展示ではなく、バンコクノイ地区の歴史を深く体感できる場所です。
医療の歴史、地域の暮らし、建築、そして川とともに発展してきた文化が一体となり、美しく保存された形で紹介されています。
バンコクを訪れるなら、ぜひ立ち寄ってほしい“隠れた名所”のひとつです。
※同じ敷地内に別の博物館もあるので、見学の際はお間違いなく。
**** 行き方 ****
船で行く場合:チャオプラヤー・エクスプレスボート(オレンジ旗・グリーン旗・イエロー旗)に乗り、「ワンラン桟橋(Wang Lang Pier)」で下船します。
MRTの場合:イッサラパープ通り駅(Itsaraphap Road Station)の2番出口を利用し、そこからバス57番またはタクシーで向かいます。




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